2005/7/15
PARKLIFE!
〜 朴智星、ユナイテッドへ!〜

 マンチェスター・ユナイテッドがこの夏やって来ます。8年前(1997年)、浦和レッズとのプレシーズンマッチで来日しましたが、そのチームとは大きく様変わり。今はベッカムもシュマイケルもいません。

 昨シーズン無冠に終わったユナイテッドですが、7月初旬の段階で移籍市場を賑わせるような選手補強は行っていません。オーナーがアメリカ人の投資家になったことで物議を醸していますが、移籍話はどこへやら…

 そんな中、新シーズンを前に2つの移籍話をまとめました。
 シーズン終了後すぐに、フルハムからオランダ代表GKファン・デル・サールを獲得。シュマイケル以降GKに恵まれていない(というか、無理です、シュマイケルと比較するのは…)ユナイテッド最大の補強ポイントだったのですが、結局噂に上がっていたブッフォンは獲得することなく、実績とプレミア経験豊富なベテランを獲得しました。
 10月に35歳になるファン・デル・サール。ピークは過ぎていても、前クラブのフルハム、オランダ代表では安定感のあるプレーを見せ続けています。ただ、さらなる大物GK獲得のための、数シーズンの箸休め的な意味合いは強いと思いますが…

 そして、2人目の補強。これには驚かされました。韓国代表の朴智星(パク・チソン/Park Ji-Sung)だったからです。
 移籍金は600万ユーロ(約8億円)億円(300万ユーロという話もあり)。ケガと年齢で精彩を欠いてきたロイ・キーンの後釜として、セントラルMFで起用したいなんて話も見たような…。PSVや韓国代表では右サイドの攻撃的なポジションを担当している朴智星ですが、アレックス・ファーガソン監督はセンターでもプレーできると判断しているのでしょう。いやはや、こんな話が出てくるくらいだから立派なものです。

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 ご存知の方も多いと思いますが、朴智星の原点は日本にあると言っても過言ではありません。2000年6月、19歳で京都パープルサンガに入団、プロフットボーラーとして第一歩を踏み出しました。

 彼の武器は右サイドからのドリブル突破と無尽蔵の運動量です。来日した当初は中盤でも中の方でプレーしていたようですが(この当時のプレーは見ていません)、サイドの攻撃的なポジションを与えられてから才能が開花し、京都での活躍につながりました。
 所属クラブのPSV、韓国代表とも、不動のポジションは右サイド。ここからチャンスメイクをするわけですが、ゴール前にも積極的に入ってきてゴールを狙います。とにかく運動量が多い選手で、マークする相手は動きを止めるのに悩まされます。
 ただ、彼には、ロナウジーニョのような百発百中突破できるテクニックやスピードがあるわけではありません。彼の良さは、恐がらずに1対1を挑み続ける精神力と、失敗した後の素早い攻守の切り替えにあります。
 彼はドリブル突破に失敗すると素早く守備モードに移ります。しかも、ディフェンスが巧く、あきらめが悪い。これはボールを奪った相手選手にとって大きなプレッシャーとなります。ボールを奪われても奪い返すことも珍しくないパクのプレースタイルがヨーロッパで通用することは、この3年で十分に証明されました。

 2003年のシーズンからJ2に降格した京都は、J1昇格を果たせずにいます(2005年はJ2首位をひた走り、おそらく来季は久々のJ1に昇格するでしょう)。降格の原因は、朴智星の移籍。彼のいなくなったたった一つのピースを埋められなかったのです。
 京都での活躍が認められ韓国代表入りし、その攻撃力と無尽蔵の運動量は韓国初のベスト4進出の原動力となり、2002 FIFAワールドカップ KOREA/JAPANでの活躍がヨーロッパの舞台へと導くことになりました。
 そして2005年7月、朴智星は世界のビッグクラブから認められ、次のステージへ上がろうとしています。

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 「ベッカムとロイ・キーンのどちらを移籍させたくないか」という質問に「キーン」と答えていたアレックス・ファーガソン監督は、ロイ・キーンをユナイテッドの象徴として扱ってきました。
 しかし、ロイ・キーンも8月で34歳。ここ数シーズンはケガに悩まされ、プレーエリアも全盛期に比べれば狭くなってきました。

 ユナイテッドのサッカーの特徴は、セントラルミッドフィールドでプレーする選手の能力が勝敗を左右することです。豊富な運動量と守備力は、ユナイテッドの中盤を任される選手にとって必要不可欠。全盛期を支えたベッカムやバットがチームを去り、スコールズとロイ・キーンだけになった現在、セントラルMFの補強は急務です。
 朴智星は、チームのために自分の能力を余すことなく発揮できる精神力と体力を持ち合わせたプロフェッショナルです。そこに注目したのがファーガソン監督本人ならば納得できます。プレーの激しさから想像できないくらい普段は大人しい朴智星は、ファーガソン監督が最も好むタイプの選手。
 なにしろ、チームの勝敗の貢献度が高かったにも関わらず、派手な生活スタイルが気に入らずレアル・マドリードへベッカムを放出してしまうくらいの人なので。

 一方、PSVのヒディング監督はこの移籍を快くは思っていない様子。「クレベルソンのようにベンチを温めることになるだろう」と語っています。
 クレベルソンはブラジル代表として2002 FIFAワールドカップ KOREA/JAPAN 優勝に貢献したMF。ヨーロッパのクラブが獲得に血眼になる中、ユナイテッドへの移籍が実現しましたが、ベンチと先発を行ったり来たり。今オフ、他クラブへの移籍も取り沙汰されています。
 他にもクレベルソンのような立場の選手がいました。カメルーン代表のジェンバ・ジェンバです。出場した試合を何試合か見ましたが、そんなに悪いとは思いませんでした。しかし、さして起用することもなく、昨シーズンにアストンビラへ売り渡しました。もしかすると、監督と反りが合わないといった理由から起用を見合わせていたのかもしれません。
 そんな最近のユナイテッドのチーム事情を見て、ヒディング監督は皮肉を言いたくなったわけです。それくらいPSVにとって欠かせない存在だったのです。

 朴智星の移籍には、ユナイテッドのアジアマーケット開拓という憶測が実しやかに流れています。しかし、移籍の決め手はPSVでのコンスタントな活躍だったことは間違いありません。そうでなければ、プロフェッショナルではあっても、かなり地味な朴智星を獲得するはずがない(笑)

 幸運なことに、ユナイテッドはプレシーズンでアジアツアーを行います。7月末、プレミアリーグ開幕2週間前というチーム作りの仕上げの段階での来日は、おそらく本気モードのユナイテッドが見られるはずです。そして、彼のプレーもその目で見られることになるでしょう。
 オールド・トラフォードで始まるPark Ji-Sungの新たなFootball Lifeに注目しましょう!