2005/8/23
モウリーニョマジック、ふたたび
〜チェルシー×アーセナル〜

 8月21日、プレミアリーグweek2の大一番、<チェルシー×アーセナル>は非常に見応えのある試合でした。

 まず、試合の前提として、アーセナル有利というのがありました。理由は次のとおり。

 (1) 前節の出来だけを見れば、アーセナルの方が内容がいい。
 (2) アーセナルは、リーグ戦でのチェルシー戦で19試合負けがない(最後に負けたのが1995年9月)。
    相性の良さは抜群。
 (3) 開幕1週間前に行われたチャリティシールドでアーセナルが敗れている。
    2連敗はしないと、監督だけでなく選手たちがリベンジに燃えているはず。

 こういった理由を並べていくと、チェルシーファンのボクでさえ、「引き分けがいいところだろうな」と思ってました。

 ところが!
 予想と反して、キックオフと同時に凄まじいラッシュでゴールをこじ開けようとするチェルシーの選手たち。そのテンションは試合を通じて変わることがありませんでした。開幕戦の不調がまるで嘘のよう!

 そして、勝負を分けたのは、またもモウリーニョマジック。
 それほど悪いとは思わなかったクレスポをハーフタイムであっさりドログバへ交代。そのドログバが決勝点を入れて、まんまと1-0で勝利を収めました。
 しかも、このゴール、パスを止めようとしたドログバの脛(すね)に当たって、GKのタイミングがズレたことで生まれたもの。なんという運の良さ!

 開幕戦(対ウィガン戦)では、途中出場したクレスポがロスタイムに決勝点をあげるという劇的な勝利でシーズンがスタートしましたが、2戦目でのロンドンダービー、しかも覇権争いを演じるはずのビッグクラブ同士の対戦で、またも選手交代によって勝利を引き寄せてしまいました。
 直接得点には絡みませんでしたが、今最もドリブルが鋭くスピードが半端でないショーン・ライト=フィリップスを後半13分辺りから投入するなんていう憎らしい演出も。アーセナルの左サイドバック、アシュリー・コールの攻撃参加を防ぐ、見事な選手起用でした。

 ホント、勝負勘の良さは抜きん出てます、モウリーニョ監督。

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 この重要な一戦で、不調だと思われたランパードが復調していました。まだ全開とまでは言いませんが、「よく見てるな〜」と思わず感嘆の声をあげてしまった試合開始直後のスルーパス。この一本のパスで、アーセナルのディフェンス陣はいきなり難しい試合になることを思い知らされたことでしょう。
 開幕戦の出来の悪さは、ディフェンディング・チャンピオンとしての力みとプレッシャーがあったのでしょうか。

 51億円で獲得したエッシェンは、合流間もないにも関わらず、後半途中からさっそく出場。中盤でアグレッシブなプレーを披露しました。連携面で「完全に合ってないわ」と思わせる場面は少なく、ミスしても動くことでミスをカバーしてしまう運動量とスピード、判断の良さはさすが。この分だと、グジョンセンが控えにならざるを得ない状況もありそうです。

 開幕2戦目でこれだけ内容の濃いサッカーを見せつけられると、10年来のファンにとっても可愛げがない…のですが、可愛げはちゃんと用意されています(笑)

 開幕戦で起用されなかったCBリカルド・カルバーリョ(ポルトガル代表)と途中交代させられたFWロッベンが、起用法について監督を批判。カルバーリョはクラブから2,800万円という高額の罰金まで課せられて…
 選手にとっては、出場してこそ出場給を得られるわけで、出場できなければ死活問題。言いたい気持ちはよく分かります。
 でも、監督がこういうことが嫌いと分かっていながら、マスコミにこういうことを話しちゃうところがお茶目と言えばお茶目。面白くなりそうじゃないですか?(笑)

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 一方のアーセナル。
 アンリの1トップ気味(ピレスが中盤から前に飛び出す感じ)で中盤を厚くした感じでしたが、これはありでしょう。

 アンリは前線のスペースを見つけ、縦横無尽に動き回ります。彼にとっては、マークを引きつけてくれるFWがいるよりも、前線にスペースがあった方が動きやすいのです。
 ヴィエイラの抜けた中盤は守備力に不安があると言ってしまえばそれまでですが、起きてしまったことは仕方ないわけで、それをどう解消するかと考えた時、中盤の人数を増やすのは賢明な選択だと思います。
 チェルシーは、ランパード、マケレレ、グジョンセン(エッシェン)という攻撃力・守備力とも超一流のMFをセンターで使っているわけですから、余計に中盤を厚くしたかったに違いありません。

 この試合、右サイドのリュングベリが前半26分で交代するというアクシデントが発生しましたが、ファン・ペルシが入ることでうまく難を逃れました。
 ファン・ペルシはFW登録ですが、前線に張るタイプではなく、攻撃的なポジションなら中盤でも難なくこなす選手です。テクニックに裏打ちされたドリブル、意外性のあるプレー、そして気性の荒さ(笑)。チェルシーのような強豪と戦う時には、必要な人材でしょう(1つ間違うと、エライことになりますが (^_^;))

 この日ベンチ入りしていたベルカンプをあえて起用しなかったのは、守備力を落としてまで1点取りに行くギャンブルを避け、ワンチャンスでなんとか引分けに持ち込みたいと考えたからではないでしょうか。鉄壁のチェルシーディフェンス陣からゴールを奪うには、テクニックより一瞬のスピードが必要です。決して悪い選択ではなかったと思います。

 不安は、いつも言われるようにセンターバック。イングランド代表として長年活躍してきたキャンベルは、そろそろ厳しそうで、ケガで開幕もアウトとなりました。復帰はいつのことやら。復帰できたとしても、おそらく冬場、またケガで離脱すると勝手にニラんでいます(笑)
 身体能力の高いトゥレがセンターバックとして定着したのはうれしい誤算ですが(トゥレは本来中盤の攻撃的な選手)、センデロスやシガンと、もしかするといなくなっていたかもしれない選手が一番重要なポジションを任されているという非常事態に変わりはありません。

 今シーズンのアーセナルは過度な期待をせず、温かい目で見守りましょう。プレミアチャンピオンとヨーロッパチャンピオンの両方を狙おうとしたら、きっとどちらも手に入らないはずです。それほど戦力は厳しい状況にあります。

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 ベンゲル監督はコミュニティシールドでのチェルシーのロングボール攻撃を皮肉ったらしいですが、その発言が的外れであることをプレーで示そうとしたかのようなこの日のチェルシー。
 名古屋時代からすごく好きな監督ですが、パブリックなコメントはもう少し気の利いたものを用意してほしいものです。どうも、こういうところに余裕が感じられません。ある意味、アーセナルをロングボールで攻めるのは常道でしょう。闇雲に蹴り続けているわけではないですし。

 その点、モウリーニョ監督は、コメントも超一流。挑発のやり方が巧み。嫌がられるはずです(笑)。この辺が、ヨーロッパでの2人の戦績につながっている気がしてなりません。いまさら変えられないことは分かっているのですが。