2005/9/26
「冬の選手権」に向けて
〜全国高校サッカー選手権大会・都道府県予選、いよいよスタート〜

 毎年、「冬の選手権」が近づくと、落ち着きません。
 1年の総決算…いや、ほとんどの高校3年生にとって、「冬の選手権」は10代最大のイベントであり、競技スポーツからの引退という側面も持っています。

 「冬の選手権」でお馴染みの「全国高校サッカー選手権大会」は、日本で最も緊張感と期待が入り交じるサッカーイベントだと断言できます。レベルはプロの方がず〜っと上ですし、ワールドカップに向けて戦う日本代表の試合には独特の緊張感があるわけですが、それとは全く違う緊張が走ります。

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 競技スポーツとしてサッカーを続けていこうとする高校生は、ここ10年で確実に増えました。
 Jリーグの発足でプロサッカー選手という職業が成り立つようになったこと、選択肢が海外に広がったことで、実力次第でサッカーを続けられる環境が整ってきたと言っていいでしょう。

 Jリーグ発足前は、高校を卒業してサッカーを続けようとすると、大学に行くか、実業団チームに入るかの選択肢しかありませんでした。もちろん遊びとしてサッカーを続ける人は多いのですが、サッカーだけを生業とするのは不可能だったわけです。
 そして、選択肢のなさは、「サッカーを続けるのは高校まで」という意識を高校生たちに植え付け、やがて伝統として日本サッカー界の基盤となっていきました。
 この傾向は今でも大半の選手にあると思います。燃尽き症候群のようなものですが、これが高校選手権87回の長い歴史が培ってきた「伝統」です(いいか悪いかは別ですよ、別)。
 だからこそ、「最後の大会」となる選手権予選は、選手一人ひとりのモチベーションを異様に高めます。そして、そのテンションは選手の親兄弟、友達、学校など身近な存在にまで飛び火します。

 高校サッカー部と関わってもう3年が経ちましたが、選手権予選の会場は常に数百人の観客で取り囲まれます。
 それは都大会本戦だけでなく、地区大会から。同級生やサッカー部の先輩はもちろん、父兄や祖父母まで、熱心に駆けつけます。彼らは選手たちの一つひとつのプレーに一喜一憂します。キレイな言い方をしてみましたが、場合によっては悲鳴にも近い声がグラウンドに響くことも多々あり。

 チームが強いかどうかなんて、関係ありません。
 高校生になると、技術的な劣勢もフィジカルで補えてしまいます。体力と集中力さえ持てば、ゴールを許さないサッカーはできるのです。実力が違えば、PK戦まで持ち込めばいいのです。サッカーに判定勝ちはありません(同点で抽選なんてことは稀にありますが)。
 メンタル面の充実は、勝利に対する高いモチベーションを長時間持続させるだけの原動力になります。これが実は厄介です。いくら試合のイニシアティブを取っていても、一本のパスミスがカウンターアタックにつながり失点…なんてことはよくあることです。
 「殺るか殺られるか」。隙を見せたチーム、弱気になったチームは確実につけ込まれます。「実力通り」に勝ち進むチームは、「本当に実力のあるチーム」です。半端な強さは、つけ込まれる理由にしかなりません。

 昨年、そして3年前、関わっているチームが、東京都の決勝まで駒を進めました。会場は高校サッカーの聖地、西が丘サッカー場。収容人員10,000弱の小さな会場ですが、その観客席は確実に満員になります。
 味方の声が通らないほどのノイズに囲まれてサッカーをするのは、普通の高校生にとって未知の領域です。いつもと違う環境に、選手の心は乱されます。大観衆の中でいつも以上のプレーを見せる選手もいれば、緊張していつものプレーができない選手もいます。張り切って前半から飛ばし過ぎて、後半には足が止まってしまったり。

 彼らはプロの原石かもしれませんが、あくまでもサッカーをしている一学生に過ぎません。自分をコントロールできるほど大人ではない。コントロールできるとすればレベルが違うはずですし、Jリーグのクラブでプレーしていてもおかしくありません。

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 この季節になると、高校サッカーの話題を扱うインターネットの掲示板が盛り上がります。「この選手は楽しみだ」とか「このチームのサッカーは、組織的で素晴らしい」とか。
 中には、監督の采配や選手のプレーに「文句」(批評ではありません。単なる文句です)を書くケースも多数見かけます。内容は非常にネガティブ(笑)

 自身はこうしたBBSに興味がありませんが(ホームページ作ったのに、BBSを置くことは全く考えてません 笑)、いろいろ問題になることも多く、一応目を通すことがあります。読んでいるとソース元がだいたい分かりますから。まあ、チーム関係者が書いていることはありませんけど(選手やその近い人が書いているケースは多々見られます 笑)。

 中には、的を得た意見もあります。「よく見てるなぁ」と感心させられることも。ただ、現場という「現実」を実感として持っていないので、そこに時間軸が存在していることに気付いていません。テレビゲームやプロフェッショナルのサッカーと混同しているようです。
 テレビゲームでうまく行くことやプロフットボーラーができることを成長過程の高校生が実現するには、それなりの時間が必要です。もちろん「できる」高校生もいますが、一高校に「できる」高校生ばかり揃うわけがありません。
 「できない」高校生をいかに育てるか。これはどの高校サッカー部においても永遠の課題なのですが、彼らはサッカーだけやっているわけではありません。当然、サッカーができる時間は制限されます。そして、99%の高校生たちは、理想に到達する前に高校を卒業していくのです。

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 高校サッカーの面白みは「計算外のことが起こる」ことです。決してプロのミニチュア版ではありません。それを目指していても、3年弱で完成することなんてありえません。
 だいたい、勝ちたくない監督、そして高校生は一人としていません。もちろん、指導力やモチベーションなどの差はあります。しかし、高校サッカーに関わる全ての人たちが、「冬の選手権」を目指しているのは確かです。

 そういう目で高校サッカーを見ると、また違うものが見えてくるはずです。「文句」の1つも言いたくなることは、重々承知しております(笑)