2006/5/16
巧すぎるがゆえ
〜小野をバックアップだと考える、いくつかの理由〜

 昨日の14時、2006 FIFAワールドカップ ドイツ大会の日本代表選手が発表されました。
 実は大会が始まる24時間前までエントリーの変更が認められているので、最終的に何が起こるかは分かりません。
 ただ、ジーコ監督がチームのまとまりを重視し、積極的にチームへ関わろうとする(もしくはそれが態度として表に出てくる)選手が選ばれたと思います。このメンバーで結果が出なければ、ま、仕方ないでしょ。

 さて、代表選手が発表になる前日、友達とああだこうだと代表メンバーを予想していたのですが、その時、「小野が先発で出てくれないかなぁ」と言われて、ちょっと考えてみました。

 個人的にはもちろん好きな選手です。高校時代から見る機会があったし、そのセンスは中村俊輔と双璧だと思ってますし。でも、ボクは小野がバックアップかな、小野をベンチに置ける贅沢さがあるんじゃないかな、そんな気がしています。友達とのやり取りを通して、その理由を整理してみました。

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 まず、オーソドックスに考えてみます。
 中盤の構成を考えた場合、どの試合も「タフさ」が勝負のカギになることを考えれば、中村と中田、そして福西は絶対に外さないはずです。中村は攻撃面で、中田は攻守両方で、福西は守備面で中盤の軸だからです。予想の段階で福西を外すような人はサッカーを知らない人なので、相づちを打ちながら「素人め!」と心で笑っておきましょう(笑)
 ここで小野を選ばないのは、タイプが中村と似ているからです。2人とも攻撃面で突出したセンスを持っているが、守備面では…。つまり、2人を入れてしまうと、中盤の守備力が落ちてしまうわけです。
 この絶対条件をもとに、色々考えていきたいと思います。

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 まず4-4-2の場合。
 よくあるパターンですが、中盤の構成をボックス型にする場合、ボランチ2人は中田と福西になるでしょう。対戦相手を考えた場合、中盤センターを任せるには絶対的なタフさが必要だからです。その前の2人ですは、中村は絶対。おそらく左に入るでしょう。
 問題は右です。結局のところ、これまでの親善試合などを考えれば、小笠原か小野を起用すると思います。でも、広範囲に動くという意味では…小笠原かなぁ。でも、本場の厳しさを知り、その中で才能を発揮した小野を起用するのはもちろんOKです。

 ただ、後半勝負をかける時、どちらがジョーカーになるかということも考える必要があります。その場合、肯定的な意味で、小野は流れを変えられる選手だと思います。海外での経験も豊富だし、フェイエノールト入団の年は途中交代で活躍していましたし。
 その点では、国際舞台、しかもワールドカップの舞台で、小笠原がゲームの途中から入って、すぐゲームへ馴染めるかというと…正直分かりません。リスクは高いと思います。だから、調子を見られる先発として小笠原を使うというやり方はあると思います。
 でも、ホントに点を取りに行く時は、ドリブラーを使っちゃうような気もします、玉田みたいな選手を。FWを3トップにして、中盤を3人にするパターン。こうなったら、福西を下げて小野ということもあるでしょうが、それは引き分け、もしくは勝たなければならない場面。つまり、ブラジル戦で勝ち点が必要な場合だけでしょう。

 次に3-5-2の場合。この「5」の中にはサイドハーフが含まれますから、実質の中盤センターは3人。つまり、中村、中田、福西になります。小野が入るとすれば、中村か中田がケガをした場合のみです。

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  「1トップにして、その後ろに3人並べるやり方。トップ下に中村、右に小野、左に中田という感じで、その後ろに福西と中田(浩)か稲本」。
 友達に言われたのですが、なるほど。相手が4バックで、両サイドバックが攻撃参加するチーム、例えばブラジル代表のようなチームにはこのパターンは合います。

 ただ、3バックになる可能性が高いオーストラリア代表、クロアチア代表の場合、このやり方はリスクが高すぎます。3バックの1人が必ず余るため、そこから落ち着いてボールをつながれたり、前線に正確なロングボールを入れられるからです。
 だから、1、2戦目で1トップにする時は、必ず2トップ下にする必要があります。しかも、1人は相当機動力が使える選手。相手DFがフリーにならないように、相手ボールになった時にプレッシャーをかけられる選手。つまり中田のようなタフでゴールを狙える選手です。

 このケースではきっと、2サイドアタッカーと考えた方がいいでしょう。後ろは相手にもよりますが、4バック+1ボランチが妥当。3バック+2ボランチは、サイドに大きなスペースができるので、ワントップでは前線からチェックできません。だから、余程勝算がある時でないと厳しいかなぁ…つまり、ワールドカップでは現実的ではない、と。
 そう考えると、トップ下2人は中村+中田(どちらかいない時に小野)。その下は絶対に福西。1ボランチができるのは彼しかいないので(スピード、瞬発力の点で稲本は△)。

 そこで、誰をサイドに置くか、です。そうなると、アクセントになる選手ということになるので、ここで玉田は絶対に入るでしょう。高原かな、右は…もちろん2人が逆になることもあります。
 センターは残り3人の誰か。守備力を考えれば、柳沢(巻は後半投入で頑張ってもらいましょう)。絶対に得点が必要ならば大黒。相手が引いて守った場合、大黒のような動きのあるFWの方を、相手はイヤがります。

 あと、ブラジル戦で1トップにした場合ですが、中盤を厚くしている分、1トップには絶対的な強さが必要とされます。前線に起点が作れなくなるからです。中盤を厚くしても、トップがボールをキープできなければ中盤の選手が前線へ飛び出すことはできません。つまり、サッカーにならなくなるのです(ブラジル相手だから、なおさらです)。
 それでは、ブラジル代表のルシオやフアン相手に1トップができる日本代表FWがいるかというと…

 まあ、色々理由はあるのですが、このように、ボクの頭の中には「先発小野」という考えはありません。

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 小野について、いくつか気になっていることがあります。
 まず、長い距離を走らないこと。スピードで勝負する選手ではありませんが、動く距離が短かったり、緩急がないと、自分のマークはずらせません。小野はそれでも、その巧さでボールはさばけます。ただし、さばくレンジが狭くパススピードが遅いため、相手がディフェンスしやすくなっている気がします。
 でも、小野が走らないのは、自分が動いてもボールが出てこないことが分かっているからという気ももしています。つまり、中村や中田がいれば、もっと動くとか。でも、攻撃に出た後にボールを奪われると、小野の戻りが遅いのは確実です。攻守の切り替えが遅いのは、小野の欠点でもあります。

 次にパスの質です。小野のパスは「受け手に優しい」のですが、受ける選手の動き出しが遅かったり合っていないと、それが生かしきれません。それくらい絶妙なピンポイントパスを出せる選手です。
 その点、中田、中村は、良し悪しは別として、パススピードが速い。他の選手をスペースへ走らせるというか、相手DFが処理しづらいイヤなボールを出します。
 小野は受け手が確実に受けられるパスを出そうとするので、その分FWの動きの質、ファーストタッチ、シュートのイメージが重要になってきます。ただ、日本代表FWの中に、小野のパスを受け、ゴールを狙えるクオリティを持ったFWがいるかというと…
 スコットランド戦の前半、DF裏に絶妙な浮き球パスを出してチャンスメイクしようとした場面がありました。しかし、三都主の前に出ていくタイミングがやや遅くてゴールキックになってしまったのですが、場面はFWでなかったとは言え、これが小野の抱えるジレンマだと思います。

 フェイエノールトで小野が輝けたのは、FW(攻撃的選手)の動き、ゴールを狙う感覚が小野の考えている次元とマッチしていたからです。やろうとしているサッカーのレベルが違う。しかも、中村とキャラクターがかぶる。それが、小野がバックアップだと思う理由です。
 多少のケガはあったものの、コンスタントにクラブと代表でプレーし続けた中村と、ケガが多く、ヨーロッパで認められながらもJリーグに戻ってこざるを得なかった小野。どちらを選ぶかと言われれば。答えは明白です。

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 でも、一つだけ可能性のあるフォーメーションがあります。それが4-4-2のダイアモンド型、中盤がトップ下、サイド、1ボランチという布陣です。この場合、中村がトップ下、福西がボランチ、サイド(というかセンターへ絞り気味)は中田+小野があり得ます。

 しかし、この布陣を使うかどうか分かりません。この布陣だとサイドにスペースを作りやすいので両サイドバックの攻撃参加がスムーズにはなりますが、中盤センターに4人が集中すると相手にサイドを使われてしまう可能性もあります。
 かと言って、マークを気にして中田や小野がサイドへ行ってしまうと、トップ下の中村がセンターの守備をフォローしなければならなくなる。中村はセルティックへ移籍して守備が上手くなったものの、残念ながら、オーストラリアやクロアチアの屈強な中盤相手にすると…。当然福西1人ではカバーできませんから、他の2人はセンターに絞らざるを得ません。

 そうなると、小野を入れた時の守備は?ということになります。日本のマイボールが奪われた後、小野の攻から守への切り換えは確実に遅いです。スピードもあるわけではないし。
 相手チームが日本を分析した時に、小野の攻守の切り替えの遅さは狙われる可能性大です。小野のポジションにわざと動き回るタイプの選手を置けばマークがずれますし、スピードのある選手を置けば小野を置き去りにできる、と。

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 こうやって考えると、ボクの予想は、「小野の先発出場はない」となります。

  ただ、こうして小野について色々考察し、オーストラリア代表のプレーオフ(昨年11月)、対ウルグアイ戦を見て感じたのですが、もしかすると、ここに触れていない選手にオーストラリア戦のジョーカーになり得る人物がいる気もしてきました。
 それはまた後日、オーストラリア戦の想定をしながら触れていくことにします。