2006/7/8
混迷とノスタルジー、その前に
〜ワールドカップ決勝<イタリア×フランス>について〜

 いよいよワールドカップも終わりかぁ…
 なんて感慨にふけることもなく、忙しさにかまけて、すっかりおざなりな更新となっていますが(苦笑)、決勝について書く前に、3位決定戦<ドイツ×ポルトガル>について一言。

 こんな試合、いつもなら見ないのですが(笑)、今回ばかりは要注目です!
 なぜかって、主審と副審が日本人! 主審を上川徹氏が、副審を広嶋禎数氏が担当するのです!

 日本人がグループリーグで2回審判を担当したのも初めてなら、決勝トーナメントで笛を吹くのも初めて。決勝トーナメントについては、アジア初ですからね。これは楽しみですよぉ。
 正直グループリーグを2試合担当した時点で、もしかすると残るのかな?と思っていましたが、決勝トーナメントに入ってから2試合4審、5審で入っていたので期待はしていました。けど、3位決定戦とはねー、意外でしたよー。

 ただ、消化試合とはいえ(!?)、きっと難しいジャッジになると思います。開催国ドイツに、シミュレーションの多いポルトガル。判定次第で大ブーイングになる可能性大です。そのプレッシャーの中で、十二分に楽しんでほしいです。国際審判は45歳が定年なので、43歳の上川氏はワールドカップ最後の舞台。少々間違えたところで問題なーい!(笑)

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 さて、決勝戦は<イタリア×フランス>。

 GK以外のメンバーを使って順調に、しかもクリエイティブに勝ち進んできたイタリアと、ジダン引退の重圧がこれまでにないチームワークへと昇華したフランス。
 どちらが勝っても納得する方が大半でしょう。イタリアが勝とうが、フランスが勝とうが、そこにはドラマがありますから。
 でも、個人的には、断然イタリアを「支持(間違えてたー!)」します(すでに勝敗予想ではないところがミソです 笑)。
 理由は簡単です。サッカーの内容。以上!(爆)

 よく「戦術」という言葉を耳にすると思いますが、その理想をワールドカップの舞台で初めて(?)見せてくれているのが今回のイタリアです。
 「戦術」というと、とかく難しく考えすぎてドツボにハマるというのが大方なのですが、イタリアは4バックを基本にしつつ、中盤と前線の構成を巧みに変化させて勝利をつかみ取ってきました。

 選手交代も絶妙でした。同ポジションの選手を替えるだけでなく、投入した選手を生かしたフォーメーションに変更し、イタリアのストロングポイントを強調した戦いを展開していました。しかも、それが勝利に必要なファクターだったという点で、特筆すべきポイントがてんこ盛りです。

 よく「戦術へのこだわりが選手の個性を消す」と言いますが、それは大きな間違いです。戦術とは選手の特徴を生かしてこその戦術であり、選手の能力を生かせない戦術なんて戦術の類いではありません。それは監督の中での「理想論」です。
 リッピ監督の知的な采配と確かな選手起用は、世界中の指導者たちに大いなる刺激を与えたことでしょう(グロッソやペロッタなどメジャーではない選手を抜擢し、しっかりと本大会で結果を出したわけだから、選手を選ぶ目も確かです)。

 この決勝を最後に、イタリアサッカー界は混迷の一途を辿ることになります(例の問題が原因ですね)。
 だからこそ、証明する必要があるのです。「カルチョ」がまやかしの世界でないことを。

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 フランスが嫌いなわけがありません。ボクの出身校はフランス人宣教師が設立した学校ですし(関係ないか)。
 でも、正直納得いかない。んーなぜだろう…その大きな原因は、勝ち方でしょう、ね。

 クリエイティブなスペインに勝ち、優勝候補筆頭のブラジルに勝ったところまでは良かった。なぜなら、フランスはあくまでダークホース的な扱いだったから。
 ワールドカップ予選では1位でストレートインしてきましたが、お世辞にも「フランスは強いねー」なんて内容ではなかった。世代交代で代表を退いたジダンやテュラムを代表に戻し、やっとこさつかみ取ったドイツの舞台。
 グループリーグでの戦いぶりも最悪でした。ジダンが出場停止だった3戦目のトーゴ戦でやっと吹っ切れて2位通過。スペイン、ブラジルに苦戦するのは目に見えていました。

 しかし、フランスは恥も外聞も捨てました。アンリ、リベリー、マルーダのスピードを生かしたカウンター攻撃を主体としたサッカーに切り替えたのです。
 若さにつけ込んだスペイン戦、セットプレーの守備の甘さを巧みに利用しゴールにカギをかけたブラジル戦。守備のスペシャリストが揃ったフランスは、スペインとブラジルを巧みに料理しました。そして、カウンター攻撃に自信を深め、リードを奪えば自陣内で罠を張ることを徹底しました。

 問題はポルトガル戦です。明らかにコンディションの良くないポルトガル相手に、前半運良く先制してから自陣内で相手の出方を待つサッカーに切り替えたのです。
 これではっきりしました。フランスは第1シードでありながら、シードに値しないことを自ら宣言してしまったのです。

 別に守備的だから批判したいのではありません。守備は「ボールを奪うための攻撃」だと考えているので、巧みなカウンターアタックは非常に好きです。
 しかし、今のフランスは、DFラインの裏に広がるスペースにボールを出しておけば、「アンリがなんとかしてくれる」的なサッカーになり下がっています。カウンターにもクリエイティブさが感じられるイタリアとは対照的です。
 これはボクが見たいフランスではない…(それもボクの幻想かな?)

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 決勝の見どころは、「自陣内でカウンターアタックのチャンスを待つフランス相手に、イタリアはどんな考え方でゴールを奪おうとするのか」。そんなところでしょう。

 決勝トーナメントに入ってからスタメンに変更のないフランスは、後半運動量が落ちるでしょう。だから、絶対に先制点が欲しい、前半のうちに。
 ただ、今回のイタリアは老練です。前半から無理にゴールを奪いに行くようなことはしない大人なサッカーをしてくるでしょう。フランスは、最後の難敵にどう挑むのか?

 結果的にですが、ブラジルが上がってきた方が面白い決勝になった気がしています。そろそろロナウドは走れるようになっていたでしょうし、ロビーニョやシシーニョがスタメンで出場できる状況が作れていたような。

 でも、ジダンという一時代を築いたスーパースターが、現役最後のプレーを見せてくれるという、ある種のノスタルジーも嫌いではありません。どのような結果になったとしても、チームメイトたちは、ジダンがベルリンのピッチを踏むために身を粉にして頑張ってきたのですから。
 目的を達したという意味で、最高の結果を得たことに素直に拍手を送りたいと思います。決して嫌みではありません(笑)